愛犬の健康を想い、「手作りごはん」に興味を持つ飼い主さんが増えています。しかし、「栄養バランスは?」「何を与えたらいいの?」と不安も多いはず。この記事では、獣医師監修のもと、手作りごはんの基本から初心者でも無理なく始められる方法、注意点までを徹底解説。まずはトッピングから、愛犬が喜ぶ健康ごはんを始めてみませんか?
犬の手作りごはん、本当に愛犬のため?メリット・デメリットを解説
手作りごはんは、愛情を表現できる素晴らしい方法ですが、始める前にメリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。
愛犬が喜ぶ!手作りごはんの5つのメリット
- 食いつきが格段にアップ:新鮮な食材の香りと味わいは、ドライフードに飽きてしまった子の食欲を刺激します。
- 水分補給が自然にできる:食材に含まれる水分をそのまま摂取できるため、水をあまり飲まない子の健康維持に繋がります。
- アレルギーや体質に合わせた調整が可能:アレルゲンとなる食材を避けたり、愛犬の体調に合わせて食材を選んだりできます。
- 添加物・保存料を避けられる:飼い主さん自身が食材を選ぶため、不要な添加物を避けた、安心・安全なごはんを与えることができます。
- 愛犬との絆が深まる:ごはんを通じて愛犬の健康を気遣う時間は、かけがえのないコミュニケーションとなり、信頼関係を深めます。
知っておくべき3つのデメリットと対策
- 栄養バランスが偏りやすい:【対策】完璧を目指さず、まずは総合栄養食のドッグフードへのトッピングから始めましょう。100%手作りに移行する場合は、必ず獣医師に相談してください。
- 時間とコストがかかる:【対策】人間の食事の準備中に、味付け前に取り分ける方法が効率的です。特売の肉や野菜を活用し、週末にまとめて調理して冷凍保存するのもおすすめです。
- 保存が効かず、管理が大変:【対策】作ったごはんは冷蔵庫で2日以内、冷凍庫で1週間程度を目安に使い切りましょう。旅行や預ける際は、市販のフードを併用するのが現実的です。
【獣医師が解説】犬の手作りごはんで最も重要な栄養バランスとは?

犬の健康を維持するためには、人間とは異なる栄養素のバランスが必要です。特に以下の点に注意しましょう。
基本の栄養素「タンパク質・脂質・炭水化物」の黄金比率
犬は肉食寄りの雑食動物であり、タンパク質と脂質を主要なエネルギー源とする点が人間とは異なります。炭水化物は必須栄養素ではありませんが、消化しやすいエネルギー源や嗜好性の向上に役立ちます。
国際的な基準である NRC(National Research Council, 2006) や AAFCO(Association of American Feed Control Officials, 2016) によると、成犬用フードでは以下の最低基準が示されています:
- タンパク質:乾物中で18%以上(NRC推奨は22%以上)
- 脂質:乾物中で5.5%以上(NRC推奨は約10〜15%)
- 炭水化物:必須栄養素ではないが、エネルギー供給源として利用可能
したがって、手作りごはんを考える際は「タンパク質をしっかり確保し、脂質でエネルギーを補い、炭水化物や野菜は補助的に取り入れる」ことが基本となります。実際の比率は犬種・年齢・運動量によって異なるため、必ず獣医師と相談の上で調整してください。
カルシウム不足に注意!サプリメントは必要?
手作りごはんでは、特にカルシウムとリンのバランスが崩れがちです。肉類に多く含まれるリンに対し、カルシウムが不足すると骨の病気に繋がる可能性があります。卵の殻を粉末にしたり、無糖ヨーグルトを加えたりする工夫もありますが、基本的には獣医師と相談の上、適切なサプリメントの活用を検討するのが最も安全です。
1日に必要なカロリー量の計算方法
愛犬の体重とライフステージから、1日に必要なカロリーを把握しましょう。
計算式(簡易版):安静時のエネルギー要求量(RER) = 30 × 体重(kg) + 70
このRERに、活動量に応じた係数(避妊去勢済み成犬なら1.6、活発な犬なら2.0〜)を掛けて計算します。まずはかかりつけの獣医師に最適なカロリーを確認することをおすすめします。
手作りごはんに使える!犬におすすめの安全な食材リスト
手作りごはんに取り入れやすい安全な食材の一例です。
- たんぱく質源:鶏ささみ、鶏むね肉、白身魚、卵
- 野菜類:にんじん、かぼちゃ、ブロッコリー、ほうれん草(茹でて少量)
- 果物:りんご、バナナ、いちご(いずれも種や芯を除去し少量)
これらは比較的与えやすく、栄養も豊富です。
【要注意リスト】犬の命に関わる!与えてはいけない危険な食材

人間には安全でも、犬には毒となる食材は数多く存在します。絶対に与えないでください。
中毒症状を引き起こす野菜・果物
- ネギ類(玉ねぎ、長ネギ、ニラなど):赤血球を破壊し、貧血や呼吸困難を引き起こします。加熱しても毒性は消えません。
- ぶどう、レーズン:急性腎不全の原因となります。
- アボカド:下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
調理法で危険になる加熱・加工食品
- 加熱した骨:縦に裂けやすく、食道や内臓を傷つける危険があります。
- 人間の加工食品(ハム、ソーセージなど):塩分や脂肪分、香辛料が多すぎます。
人間用の食べ物で特に注意すべきもの
- チョコレート、ココア:テオブロミン中毒を引き起こし、最悪の場合死に至ります。
- キシリトール:ガムや歯磨き粉に含まれ、少量でも急激な血糖値低下や肝不全を起こします。
- アルコール、カフェイン
こんな時は注意!手作りごはんを控えるべきケース
以下のような持病がある犬には、手作りごはんの内容に注意が必要です。
- 腎臓病・心臓病:ミネラル(特にリン・カリウム)の摂取に制限が必要な場合がある
- 糖尿病:炭水化物や糖分のコントロールが重要
- 膵炎や肥満:高脂肪食は悪化の原因に
このような場合は必ず獣医師に相談し、食事内容を調整しましょう。
初心者でも簡単!今日から始める手作りごはん3ステップ
ハードルが高いと感じる手作りごはんも、ステップを踏めば無理なく始められます。
ステップ1:まずは「トッピング」から試してみよう
いつものドッグフードを1〜2割減らし、その分だけ手作りした食材を乗せてみましょう。茹でたささみや、細かく刻んだ茹で野菜(にんじん、ブロッコリーなど)から始めるのがおすすめです。
ステップ2:「茹でるだけ」「混ぜるだけ」の超簡単レシピ3選
- 鶏むね肉とキャベツのスープ煮:細かく切った鶏むね肉とキャベツを、ひたひたの水で煮るだけ。人肌に冷ましてフードにかけてあげましょう。
- 鮭と豆腐の混ぜごはん:加熱してほぐした鮭と、水切りした豆腐を混ぜるだけ。オメガ3脂肪酸が豊富な鮭は皮膚の健康維持にも役立ちます。
- 納豆とオクラのネバネバごはん:ひきわり納豆と、茹でて刻んだオクラを混ぜるだけ。腸内環境を整える効果が期待できます。
ステップ3:慣れてきたら挑戦!1食分の完全手作りごはんレシピ
【鶏肉と彩り野菜のリゾット風ごはん】
- 材料:鶏もも肉、ごはん、にんじん、パプリカ、ブロッコリー、鶏の茹で汁
- 作り方:
- 鶏肉と野菜を細かく刻む。
- 鍋に鶏肉、野菜、茹で汁を入れて火にかけ、具材が柔らかくなるまで煮る。
- 火を止めてからごはんを混ぜ、人肌に冷まして完成。
手作りごはんを続けるためのコツ

手作りごはんは毎日でなくても大丈夫
「毎日続けられるか不安…」という飼い主さんも多いですが、手作りごはんは毎日でなくても問題ありません。
週2〜3回、トッピングとして取り入れるだけでも、愛犬にとって十分なメリットがあります。無理なく続けることが、長く健康をサポートする秘訣です。
手作りごはんにかかる費用の目安
気になるコストですが、小型犬なら1食あたり100〜200円程度、中型犬以上では300円程度が目安です。
市販フードと併用すれば経済的な負担を抑えつつ、安心できる食事を用意できます。
冷凍保存と解凍方法の工夫
作り置きする場合は、冷蔵で2日以内、冷凍なら1週間程度を目安に使い切りましょう。
冷凍したものは電子レンジで軽く温めて人肌程度に冷ますか、自然解凍してから与えると安心です。熱すぎる状態で与えないよう注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 毎日手作りしないとダメ?
A. 全く問題ありません。週末だけ、時間がある時だけでも大丈夫です。飼い主さんが無理なく、楽しみながら続けられることが一番大切です。
Q. アレルギーがある子でも大丈夫?
A. むしろ、アレルギーの原因食材を特定し、それを避けたごはんを作れるのが手作りの大きなメリットです。必ず獣医師の指導のもと、アレルゲンではない食材を選んであげてください。
Q. 老犬(シニア犬)や子犬に与える際の注意点は?
A. シニア犬には、消化しやすく、飲み込みやすいように細かく刻んだり、とろみをつけたりする工夫が必要です。一方、成長期の子犬は特に多くの栄養を必要とするため、自己判断での手作りごはんは非常に危険です。必ず獣医師の指導を受けてください。
Q. ドライフードと手作りごはんは併用できますか?
A. もちろん可能です。むしろ総合栄養食をベースにしながら、トッピングで手作りを加える方法は、栄養バランスを崩さずに始められる理想的な形です。
Q. 手作りごはんを続けないと効果がないですか?
A. 効果は「続けないとゼロになる」というものではありません。たとえ週末だけでも、愛犬の健康とコミュニケーションに役立ちます。
まとめ
犬の手作りごはんは、難しく考えすぎず、まずは「いつものフードに少し加える」ことから始めるのが成功の秘訣です。この記事で紹介したポイントを参考に、愛犬とのコミュニケーションを楽しみながら、美味しく健康的なごはん作りを始めてみてください。